福祉レポート~社会保障論①(社会福祉士指定科目)

福祉レポート~社会保障論①(社会福祉士指定科目)

課題の概要

私たちの生活環境の変化を踏まえながら、社会保障をどのように理解したらよいか。現代社会において社会保障(制度)が果たしている役割について述べなさい。

解答

初めて社会保障という言葉が用いられたのはアメリカであった。1929年の世界恐慌によって深刻な不況に陥った際に、1933年に大統領に就任したフランクリン—ルーズベルトが経済保障委員会を立ち上げたが、その審議が経済的なものだけでない幅広い内容だったことから、経済保障ではなく社会保障という言葉が用いられるようになった。

この審議を通じ生まれた社会保障法は、政府による老齢年金保険、州政府による失業保険、州政府による公的扶助という内容を持つものであり、失業や貧困の救済責任が国にあることを明らかにした点で画期的な法律であった。

日本において社会保障制度が本格的に創設されたのは、第二次世界大戦後である。1950年に日本の社会保障制度の在り方についてまとめた「50年勧告」が示された。50年勧告では最低限度の生活保障を目的として、防貧を保健的方法または直接公の負担、救貧を国家扶助が担うという貧困対応を示し、社会保障制度を社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生の4つの制度に分類している。1995年には、社会保障制度審議会勧告が示され、これまで最低限度の生活保障をされていた社会保障の目的が、広く国民に健やかで安心できる生活の保障へと変えられた。

社会保障は、社会保険と社会扶助によって構成される。社会保険は公的保険者のもと保険集団から保険料を徴収し、老齢、疾病、失業等の保険事故に対し給付を行うものであり、租税を財源として保険技術を用いず給付を行う社会扶助と性質が異なるものである。この構成のもと、社会保障の機能は、①社会的セーフティ・ネット機能 ②生活と経済の変動安定機能 ③所得再分配機能 ④リスク分散 ⑤社会的統合機能の内容 の5つがあるといえよう。

では、社会保障は現代社会においてどのような役割を担っているのか。

私たちの生活環境は、刻々と変化を重ねている。その中で、「できることなら避けたいが、完全に避けることが不可能で、時期やそれによって被る経済的損害が正確には予測できない出来事」に遭遇する。その出来事、いわゆるリスクの主なものとして、長生きのリスク、早死にするリスク、病気やけがをするリスク、障害をもつリスク、失業するリスク、介護が必要になるリスクを挙げることができる。

社会保障の役割は、これらのリスクに対して、公的責任のもと給付をもって対応することで生活の保障を行うことにあると言えよう。以下では先述の6つのリスクに基づきその具体例を挙げる。

長生きのリスクについて、高齢社会となった日本において、身体的制約が増え労働収入を得ることが難しくなる高齢期の収入の確保は課題であると言える。このリスクに対応する制度として、社会保険としての老齢基礎年金、老齢厚生年金等の給付がある。

早死にするリスクについて、世帯主が若くして亡くなった際には、家族の生活の維持が課題となる。このリスクには社会保険としての遺族基礎年金、遺族厚生年金等の給付、そして社会扶助の母子福祉資金貸付がある。

病気やけがをするリスクについて、疾病・けが等により労働できないことで収入が得られない、また医療費がかかるなどのリスクが想定される。これに対し、社会保障としての休業補償給付や療養補償給付、そして療養の給付などがある。

障害をもつリスクについて、先述の病気やけがから障害を負い、これまでの生活の継続が難しくなる課題がある。これに対し、社会保険としての障害基礎年金、障害国民年金の給付、社会扶助における自立支援医療費の支援や介護・訓練等給付、地域生活支援事業などがある。

失業するリスクについて、景気変動や雇用形態の変化により職を離れる可能性が想定される。これに対し、社会保険としての失業等給付、雇用安定事業、能力開発事業等がある。

介護が必要になるリスクについて、高齢化の進展の中で要介護状態になるリスクが非常に高まっている。このリスクへの対応として、社会保険としての介護保険上の施設介護サービス、在宅介護サービス、福祉用具購入、住宅等改修費、介護予防サービス等の給付や、社会扶助としての老人福祉施設が挙げられる。

なお、これらのリスクに共通し経済的に生活の継続が困難になった際の対応として、公的扶助が存在する。

これまで、現代社会において社会保障が果たしている役割について述べた。社会保障は私たちの生活環境における予測できない経済的損害の可能性を見越し、実際にその損害を受ける状況に瀕した際にも安心しできる生活を送るために、重要な役割を担っていると言えよう。

引用・参考文献

1) 臨床福祉シリーズ編集委員会編 『社会福祉シリーズ12 社会保障(第5版)』
弘文堂,2017年

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