精神障害者雇用に必要な5つの理解と配慮

精神障害者雇用に必要な5つの理解と配慮

平成30年度に施行された改正障害者雇用促進法に、「精神障害者の雇用義務化」が盛り込まれた。

日本において、精神障害を抱える方の増加や、地域移行に向けて精神障害を抱えても地域において「就労」が可能である環境が求められるようになったことなどを背景に、精神障害を抱える方を取り巻く環境が大きく変化してきた。その中で、「精神障害者の雇用義務化」が進められたのは自然なことと言えよう。

この「精神障害者雇用義務化」という言葉は、非常に分かりにくい。この言葉を目にした誰もが「企業で精神障害者を雇用することが義務となった」と誤った認識をしてしまいやすい。

障害者雇用促進法では、企業に対し法定雇用率制度という、法定雇用率に応じた数の障害者を雇用することを義務として課していた。

平成29年度以前は、この法定雇用率制度の雇用の対象となる障害者を、身体障害者と知的障害者に限定しており、精神障害者は含まれていなかった。

しかし、平成30年度から法定雇用率制度の雇用の対象となる障害者に精神障害者が含まれた。これが、「精神障害者の雇用義務化」である。

精神障害は、身体障害や知的障害に比べ目に見えにくく、周りから見て当事者の困りが把握しにくいという特性がある。そのため、精神障害は他の障害に比べ理解が進まず(他の障害についても理解が進んでいるかは疑問であるが)、周囲が気を遣いすぎ腫れ物を触るような対応をされてしまうといったケースも少なくない。

これは、雇用においても大きな壁となりえる。今回は、このような精神障害の方を取り巻く環境を前提に、雇用において配慮していただきたい点をお伝えしたい。

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精神障害の症状は一様ではないことを理解する

精神障害と一言にいえども、精神障害の症状は一様ではない。精神障害に含まれる症状は実に多岐に渡るのである。

病名で言えば、うつ病や双極性障害、統合失調症、高次脳機能障害、自閉スペクトラム障害、ADHD、てんかん等、これだけでもほんの一部である。

その上で、精神障害を抱える方を雇用するにあたって「精神障害」であることや「病名」が何かを知ることより、本人が実際に発症している症状や、それによる困りや悩みを把握することを優先していただきたい。それは何故か。

統合失調症を発症している方を例に挙げよう。統合失調症の症状として主に幻覚や妄想が挙げられるが、発症している全員が幻覚があるとは言い切れず、また妄想があるとも言い切れない。

発症しているその人によって症状の内容は異なるため、症状の内容を切り取るより、「その症状によって本人が何に困り悩んでいるのか」を知ることの方が、本人が安定して働きやすい条件を見出すヒントになりやすいと言える。

 

分かりやすく明確に伝えること

精神障害を抱える方の特性として、「ストレスへの脆弱さ」が挙げられる。1つの小さな不安が大きな不安へと繋がり、ストレスを抱えやすいともいえる。

そのようなストレスを軽減するために、仕事上の指示はできるだけ分かりやすく明確に伝え、本人が最終的な仕事のゴールをはっきりとイメージできるようにすることが効果的である。

「仕事は指示されたゴールに対して、自分で道筋を立てるもの」と考える方も多い。しかしながら、仕事のゴールに向けた道筋が多ければ多いほど、また道筋が見えにくければ見えにくいほど、仕事に対する不安が大きくなる

この不安を軽減するために、仕事のゴールや進め方について、より具体的かつ明確に伝え、本人が安心して仕事に取り組める指示の出し方を工夫する必要がある。

また、指示の出し方ではなく、仕事の内容をイメージがしやすい定型的なものに見直すというのも効果的と言える。

 

指示を出す職員を固定すること

職員が多い職場では、複数の上司から同時に指示を受ける場面は少なくない。

しかしながら、指示を出す人間が多ければ多いほど、指示を受ける側の混乱を招きやすい。それは、同時に指示を受けることで優先順位をつけなければならないことや、上司同士の板挟みに遭うリスクが高くなることなどから、容易に想像できる。

そのようなリスクを避けるためにも、本人に指示を出す職員はできるだけ少数、可能であれば1人に固定することが理想である。

これは、本人の業務上の混乱を避けるだけではなく、困り・悩みに対して相談できる信頼関係を構築し、本人の働きやすい環境を形成することにも通じるのである。

 

予め予定を示すこと

仕事上の予定を、なるべく早めに示すことはストレスの軽減に効果的である。

突然直近の予定を言い渡されると、本人は心の準備が整っておらず、その急激な変化にストレスを感じてしまいやすい。そのため、予め心の準備を整えられるよう、なるべく早めに予定を伝えた方がいいと言える。

その上で注意が必要なのは、「直近での予定変更はなるべく行わないよう配慮する」ことである。これも先述した「直近の予定を言い渡される」同様に、本人のストレスに繋がりやすい。

本人が心に余裕をもって仕事に取り組めるような配慮は、本人の仕事しやすい環境に繋がりやすいとも言える

 

支援機関を積極的に活用すること

障害者雇用を支援する機関の利用は、本人だけでなく企業にとっても転ばぬ先の杖になり得る。

就労支援において、企業への支援機関の介入は敬遠されやすい。それは、雇用側から見て、「支援機関から企業を評価されるのではないか」との誤解があるからであろう。

しかし支援機関の活用は、大きな効果を発揮する。過去には、ジョブコーチを利用した際の半年後職場定着率は9割を超えると言われたこともあった。

これは、本人と雇用側の橋渡しを行い、双方の困り・悩みと解決策を就労支援の経験から明確な助言ができるためである。

雇用上の困り・悩みを相談できる機関の代表的なものとしては、「都道府県障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」などが挙げられる。

これらの支援の積極的な活用が、円滑な職場適応・職場定着に大きな力を発揮する可能性は高い。

 

まとめ

これまで、精神障害者の雇用において必要な理解と配慮についてお伝えした。

精神障害を抱える方々は、環境の変化によるストレスの影響が体調に出やすい。このことを理解した上で、職場環境の構築を検討する必要がある。

そのためには、本人の困り・悩みにピックアップし、その不安に応じた対応をイメージし、実行することが求められる。そのために、支援機関から助言を受けるのも一つの手といえよう。

このように環境を整えることは、精神障害を抱える方の雇用受け入れだけでなく、多くの人の働きやすい職場環境の形成に繋がると言えよう。

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