重度訪問介護 就業時に使えない2つの理由

重度訪問介護 就業時に使えない2つの理由

重度訪問介護は、就業のための通勤や就業時の身体介護などを目的として利用することができません。

それには大きく2つの理由があります。

①就業中の障害者の支援は、雇用している企業がするべきだから

②就業中の重度訪問介護の利用をみとめると、企業が障害者の支援を考えなくなるから

国がこれらの2つを理由に重度訪問介護だけでなく、就業時の福祉サービスの利用を認めていません。

今回は、この2つの理由を分かりやすく解説します。

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重度訪問介護とは?

重度訪問介護は、重度の肢体不自由や重度の知的障がい、重度の精神障がいをかかえていて、つねに介護が必要な方が利用できるサービスです。

利用できるサービスの内容は、おもに3つに分かれています。

  • 入浴や食事、着替えや排せつなどを手伝う「身体介護」
  • 調理や洗濯、掃除などをする「家事援助」
  • 外出時の移動の支援や移動中の介護をする「移動介助」

重度訪問介護は、「障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 )」で定められている福祉サービスです。

つまり重度訪問介護は、障害をかかえる方を対象としたヘルパーです。高齢者が利用できるヘルパーとはちがうことを覚えておきましょう。

 

就業中に「重度訪問介護」は使えない!?

近年、障害者雇用が注目をあつめています。

障害をかかえながら働いている方の数が年々ふえているにも関わらず、じつは重度訪問介護は就業中に利用できないサービスになっています。

就業中に重度訪問介護を「利用できない」とはどういうことなのでしょうか?

重度訪問介護は「通勤や経済活動にかかわる支援は対象外」というきまりがあります。このきまりにあわせて考えると、仕事に行くためまたは仕事中に重度訪問介護を利用することができないのです。

 

就業中に「重度訪問介護」が使えない理由

就業中に重度訪問介護を利用できない理由として、厚生労働省は2つのことを挙げています。

 

就業中の障害者の支援は、雇用している企業がするべきだから

厚生労働省は、就業中の障がい者の支援は企業が行うべきとしています。

「企業は人を雇いいれて利益を得ているのだから、雇用している職員への支援は企業がするべきだ」と考えています。

実は、厚生労働省は「就業中の支援」に対して公費負担がでることを問題としているようです。

重度訪問介護をはじめとする障害福祉サービスは、原則として利用者が利用料の1割を負担します。あとの9割は公費によってまかなわれているのです。

厚生労働省は、就業中の支援に公費がつかわれることで「公費によって企業や個人の利益がうまれる」状況をさけたいのです。この状況は、公費を受けずに利益をうみだす企業や個人と不平等に感じられるからです。

 

就業中の利用をみとめると企業が支援を考えなくなるから

厚生労働省は、「就業中の福祉サービスの利用をみとめると、企業がサービスに頼ってしまい、障がい者の支援を考えなくなってしまう」ことも理由に挙げています。

就業中の障がい者の支援は、それぞれの方のそれぞれの状況に応じた個別対応や環境整備が必要になります。

しかし、就業中の重度訪問介護をみとめてしまうと、企業がそのサービスに頼ってしまうようになる恐れがあると厚生労働省は考えています。

平成25年に施行された「障がい者差別解消法」のなかでは、個別の障がいに応じて生活しやすいように環境の調整を行うことをさす「合理的配慮」という言葉がでてきます。

厚生労働省は、福祉サービスの利用をうながしすぎると一人ひとりが合理的配慮を考えず、福祉サービスに頼りきってしまう状況を危惧しているのです。

 

まとめ

厚生労働省は、就業中の支援に公費がつかわれること、福祉サービスが過剰に供給されることで合理的配慮がはかられなくなることを不安視し、重度訪問介護の就業中利用を制限しています。

その代わりとして、常時介護が必要な方を雇用した場合の企業への助成を検討しているようです。

重度訪問介護の利用者は、自分の希望を実現するために重度訪問介護を利用します。契約し、利用料を支払い、ヘルパーを利用することでだけではできないことを実現するのです。

そのサービス提供の範囲は、あくまで身体的なサポートと相談に限られており、本人の仕事などの「個人的能力」に踏み込んだボランティアは行いません。

また、ヘルパーの役割は身体的介護だけではありません。福祉の価値に基づいた本人の権利擁護が求められます。つまり、ヘルパーは利用者の就業しにくい環境を変える一端を担っています。

これらのことを考えれば、厚生労働省の不安はみずから管轄している福祉サービスや福祉価値・理念への理解や実践の不足から生じているものと考えられるのではないでしょうか。

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