結局福祉ってよく分かんねぇや

福祉は自分で定義するものらしい

結局福祉ってよくわかんねぇや

福祉レポート~精神保健福祉援助技術総論Ⅰ(PSW国家資格化の意義)

f:id:potate0023:20181021221328j:plain

課題の概要

精神保健福祉士国家資格化の意義

 

解答

精神保健福祉士(以下、PSW)は、1997年に成立した精神保健福祉士法により国家資格化された。援助が長期にわたりやすく、地域生活のために関係機関の連携と近隣住民の理解、サポートが必要となるという特徴を持つ精神障害者の援助において、専門職であるPSWが担う役割は大きい。以下では、そのPSWがわが国で国家資格化された歴史的変遷と意義について述べる。

わが国においてPSWの起源とされているのは、1948年に国立国府台病院で臨床チームの一員として配置された社会事業婦だと言われている。その後、1950年の精神衛生法の制定により、私宅監置の禁止や入院制度、精神科病院の都道府県への設置義務が規定されれたこと、そして当時の民間の精神科病院の増加を背景に、精神科病院においてPSWが採用されるようになった。1964年には日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会(以下、日本PSW協会)が設立され、PSWの全国組織化が図られたことで、職務の専門性を高める機運が到来した。

そのような中、PSWの業務にはサービス利用者の人権を侵害する行為となりえるという加害者性を孕んでいることを再認識する事件が起こった。この事件は「Y問題」と呼ばれており、PSWの立場性や視点、専門性に大きな影響を与えた。

Y問題は、保健所のPSWが受験をめぐってYさんと対立していた家族の相談に基づき、本人不在のままYさんを精神病と予測し、入院を前提とした関係機関との連絡調整を行ったことに端を発する。結果として、Yさんは診察もないままに不当な入院を強いられることになった。このことについて、Yさんは無診察入院と適切な治療が行われなかったとして、病院を相手取って訴訟を起こすに至った。

この事件を背景として、1975年に日本PSW協会がまとめた報告書「Y問題調査報告により提起された課題の一般化について」では、PSWが当事者の立場に立つことを基本姿勢とする業務のあり方とその業務遂行を保障し得る身分制度の確立を課題として取り上げることを協会の基本方針とし、PSWの専門性の明確化と資格化が求められるようになった。

また、1984年に精神科病院において看護職員の暴行により入院患者2名が死亡する、宇都宮事件が発覚した。暴力の他にも病床数を超える入院患者の受け入れ等の精神障害者の人権を無視した劣悪な病院の状況が明らかとなった。

この事件について、国際人権連盟を通じ国連差別防止・少数者保護小委員会に提訴され、国内外でわが国の精神科医療に対しての批判が高まった。これを契機に、国際法律家委員会および国際医療職専門員会の合同調査団が調査のため来日し、その調査結果である「日本における精神障害者の人権及び治療に関する国際法律家委員会の結論及び勧告」が日本政府に言い渡された。

この勧告をもとに、1987年に精神衛生法を精神保健法への改正に繋がった。精神保健法では、法の目的を人権擁護と社会復帰促進の2つに重点が置かれている。精神保健法の国会審議の過程において、PSWなどのマンパワーの充実を図る付帯決議がなされ、それに伴い日本PSW協会においてもPSW国家資格に関する基本的な視点を整理することとなった。

1988年に社会福祉士及び介護福祉法が施行されたが、国会では社会福祉士の他に医療ソーシャルワーカーの資格を定めるとしており、厚生省は1990年に「医療福祉士(仮称)資格化にあたっての現在の考え方」を示した。しかしながら、日本PSW協会を含む関係団体の意見が一致しなかったために、法案の国会上程はなされなかった。

その後、1993年に行われた精神保健法施行5年後の見直しの際に、精神科ソーシャルワーカーの国家資格制度の創設についての付帯決議がなされたこと、障害者基本法の成立により、精神障害者が法的に医療だけでなく福祉の対象となり、PSWの地域生活支援への基盤が明確化されたことから、PSWの国家資格化に向けた機運が高まりを見せた。そうして、1997年の臨時国会最終日に精神保健福祉士法が成立し、PSWが国家資格として位置づけられるに至った。

以下ではこれまでのPSWの国家資格化の歴史的変遷を踏まえ、国家資格化の意義として考えられる5点について述べる。

1点は、精神障害者の社会復帰を担うことにある。精神障害者の人権を擁護し、当事者の主体性を大切にした自己決定尊重の原則の視点を持つPSWが社会復帰を担う存在として具体化された。精神保健法の柱の一つとして社会復帰促進を掲げてきたが、そこに具体的に取り組む存在とし専門性をもつPSWが役割を持つことができた。

2点は、保健と医療にまたがる資格ということにある。精神障害者の支援において、医療ケアを適切に受けることが重視される。その中で、医療スタッフとクライエントの信頼関係は不可欠であり、二者を結ぶ存在としてPSWが役割を持つことができた。

3点は、医師との関係が指示ではなく主治医の「指導」であることにある。医療および保健指導の観点に基づく主治医の指導は、社会福祉に関する知識とスキルに基盤を置くPSWの観点と専門性が異なる。主治医の「指導」を受けるのは、PSWが相談・助言を実施し、クライエントの精神疾患の状態を把握するためであり、それが明確になったと同時にPSWの独自の専門性が具体的になった。

4点は、日常生活訓練を行うことにある。PSWは、保健医療と福祉にまたがる専門職であるため、クライエントの必要とする訓練においては、実質的なコーディネーターとしての役割が期待されているのである。

5点は、精神障害者を対象とする資格ということにある。精神障害者の援助は知的障害者や身体障害者に比べ、援助が長期にわたる、多職種連携と近隣住民の理解とサポートが不可欠となる、アドボカシーやソーシャルアクション機能が極めて重要なものとして求められる等の特徴を持つ。このことからも、他の障害と同一の援助を求めるよりも精神障害に特化して援助を検討する必要がある。国家資格化により精神障害に特化した専門資格として位置づけられたことの意義は大きい。

PSWが国家資格として位置づけられたことにより、精神障害者の社会参加の実現と国民のメンタルヘルスの貢献に寄与できる基盤ができた。PSWの活動領域は今もなお広がりを見せており、国民のメンタルヘルス課題に対して支援活動を実践することも重要な役割となっている。これらのことからも、PSWの国家資格化により具体化された役割を担いつつ、多様化していく課題に対応していく専門性を身につけ援助にあたることが、今後も求められるだろう。

 

引用・参考文献

1)精神保健福祉士養成セミナー編集委員会編 『精神保健福祉士養成セミナー3(第6版) 精神保健福祉相談援助の基盤[基礎][専門]』 へるす出版,2017年 p.1-19

2)社会福祉士養成講座編集委員会編 『新・社会福祉士養成講座6 相談援助の基盤と専門職(第3版)』 中央法規出版,2015年 p.6-7

 

感想など

私はあまり歴史は好きではないのだが、精神保健福祉においては、その当事者の不遇や社会の変遷など、今の支援に活きる情報が多い。

そして、この科目で考えさせられたのがY事件。Y事件は本当に教科書等で取り上げられている内容の事件だったのであろうか。私たちは文献を通じ、一方の視点しか知りえない。それに対し疑問をもち掘り下げることの重要性を教えてくれたのが、この科目であった。